2006年07月04日

背徳のレディ・ボーデン

 ハーゲンダッツ、昔で言ったらレディ・ボーデン。

 高いアイスは普段食べない。

 金銭面の理由もあるけど、ありがたみがなくなるから。コンビニで買ったラクトアイスの食感に慣れてしまったということもある。

 食の安全・安心Q&A アイスクリームとラクトアイスの違い
http://www.cfqlcs.go.jp/technical_information/consumer_consultation_case/tamago.htm

 今のラクトアイスは改良が進み、(卵等の)コクがあって馬鹿に出来ない味だけど、昔のラクトアイスって、アイスクリームの廉価版ってイメージがあった。その頃は、近所でアイスクリームは販売されておらず、ほとんど食べる機会も無かった。だから、その違いにも気にならなかった。

 ただ、たまたま、どこかから届いたアイスクリームの味が頭に残っているうちは、ラクトアイスの素っ気無さに驚いたものだ。「こんなの食べていたんだ。」


 違いを理解できたところで、問題が解決する訳ではない。アイスクリームが残っている限り、真夜中にいそいそと冷蔵庫に向かうのだ。

 「これくらいなら、食べてもバレない。」

 「いやいや、これくらいなら、まだまだ。」

 「まだまだ。」

 随分と減ってしまったアイスクリームを見て、発覚を恐れはするものの、満足すれば、眠くなり、眠くなったら眠るのが子供というもの。どうでもよくなって、床に付く。



 翌日、そんな行動などお見通しの母親の追及が始まる。

 予見していたなら未然に防いでもらいたいものだが、それは泥棒の言う台詞じゃない。お約束どおりの虚偽の申告をするのだが、それらはことごとく、冷たい笑顔で流される。いつの間にか無くなってしまうアイスクリームなど、この世には存在しないのだ。真実の輪郭をなぞる素振りも見せず、核心を突いてくる、閻魔。

 「やったのか?」

 「・・・やりました。」



 その後の記憶はひどく曖昧なものでした。記憶に残るはアイスクリームの甘さのみ。かくして、成長しない人間はいくつかの記憶の欠落と甘いアイスクリームの味を心に残し、大きな子供になる。



 気付きもしないうちに、レディ・ボーデンはハーゲンダッツにその位置を奪われていた。どこに行ったものかと思っていたのだが、ここ最近、映画館にてレディ・ボーデンを見つけ、食べた。美味しかった。記憶に残る、背徳の味では無かったが。
posted by ねこめ〜わく at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 甘味 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ディスタンス

 ディスタンス

 上手く書けず、ネタバレになります。すみません。

 ストーリー ビデオジャケット引用

 山あいの湖に集まった4人。
 彼らは殺人事件の加害者家族だった・・・。

 カルト教団「真理の箱舟」の信者が起こした無差別大量殺人。実行犯は教団の手で殺害され、教祖も自殺した。
――それから3年目の夏。山あいの小さな駅に集まった敦、勝、実、きよかの4人。彼ら〈加害者遺族〉は年に一度、〈家族〉の遺灰が眠る湖に集まるのだ。だが、あるアクシデントから元信者だったという男・坂田とともに、5人は実行犯たちが最後の時間を過ごしたロッジで一夜を過ごすことになる。信者たちの生活の痕跡が残るその空間で、彼らは今まで目を背けていた[記憶]と否応なく向きあう――。

 全編手持ちカメラ、自然光のみによる撮影、そして台詞のほとんどが役者の即興的演技、という新たな演出で人間の心の葛藤を静かに描いたのは、是枝裕和。『幻の光』、『ワンダフルライフ』に続く注目の監督第3作。




 「自然を自然光で撮る。しかも、手持ちカメラで。」と、いうことで、自分がキャンプにでも着たかのように感じられます。実際にきよかが作ったおにぎり美味しそう。正直、食べたい。舞台がヘビーなので、重たい映像を予想しておりましたが、そんなことはありません。どちらかというと、環境映画にでもなりそうなくらい、観ていて心が穏やかになる映像です。(効果をねらった音楽もありません。鳥のさえずり、雨の音。)

 そういった中でふと、亡くなった〈家族〉のことを思い返すから、沁みてくるというか、そういった感じがあります。

 題名であるディスタンスは心の距離を示しています。彼らが眠っている湖には途中で切れた桟橋がかかっており、それがちょうど渡りきってしまった家族と残された家族を示すかのようです。

 いくつかの回想で彼らと遺族の交流が描かれます。近くに居たはずなのに、手繰り寄せることもできなくなった。彼らが理解出来ない。一体どこでボタンを掛け違えたのだろう? 自身の心を掘り返すことで、彼らの残したサインを思い返します。 

 同質の酷い経験を味わった遺族同士でさえ、心に距離があります。
しかし、〈家族〉が旅立ったのは距離が無い世界、理解の彼岸です。


 僕たちに何ができるのか?そういうことを考えさせられる映画です。



 と、ここまで、肯定的な感想。





 不満なことは、実行犯があくまでも彼岸の人として描かれていること。彼らも普段は普通に生活しているはず、どこかが違っているだけで、すべての面でおかしい人じゃない。それでは人物としての深みが無くなってしまう。

 同様のことだが、役者の即興的芝居ということは、役者を選んだ時点で物語の出来が決まってしまうということ。そして、皆が役割を理解して演じていても、その演技に温度差ができるということ。

 また、役の作りこみが、時間としてオファーを受けてから撮影までとなってしまう為、どうしても浅くなってしまう。例えば、光市母子殺人事件の被害者、本村さんの主張の変化を考えてみて欲しい。始めは感情的であったものが、被害者遺族全体の今後を考える哲学にまで行き着く。

 映画の遺族の言い分は3年間苦しんで考えたものとは思えない軽さであった。リサーチの結果できた台本じゃないから、「求めても酷」なのだが、舞台の大きさを思うと、こじんまりした話だなって感じはする。
posted by ねこめ〜わく at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Kusukusuさんへの返信

 この記事は5月23日の「さらば映画秘宝  思想から遠く離れて」の続きにあたります。


>Kusukusuさんへ

 『出草之歌』に関するコメントありがとうございます。書いているうちに長文になりましたので、コメントではなく本文で返事をさせて頂きます。

 「左寄り」と表明されてしまうと少し戸惑うのですが、先の『出草之歌』についての記事はそもそも右寄りだから書いたものではありません。僕が右寄りか左寄りかを判断されるなら先の記事と共に『ハーヴェイ・ミルク』についての記事も読んで頂けると幸いです。

 また、先の記事は映画『出草之歌』を批判したくて書いたものでもありません。そのことは、冒頭の「映画の内容についてはともかく」との記述やタイトルが他の記事とは異なり映画名になっていないこと、すなわち『出草之歌』となっていないこと、さらには属するカテゴリーが映画カテゴリーではないことからも分かると思います。先の記事をUPした5月23日の時点では、『出草之歌』が公開されていないので批判のしようがありません(東京の6月3日が初上映)。以上を前提に書きます。


 先ず、前回は、霧社事件と台湾人戦没者の靖国神社合祀反対運動という、高砂族という点以外には繋がりを見出せない事柄について、民族音楽学者である故・小泉文夫氏の『首狩り族は得てして音楽も優れている』という言葉を本来の文脈とは異なる引用の仕方(リアル首チョンパ映画という表記)で接合することで、自己の主張に合う一連の流れとして見せている映画秘宝・田野辺尚人編集長を批判しています。その際、高金素梅氏が高砂族を代表する存在であるのかという点に疑義を示しましたが、これも田野辺氏の記事が殆ど何のフォローもなく既成事実として述べている点に対してです。それがこの記事の全てです。

 次に、高金素梅氏が中国寄りか否かについてKusukusuさんのTB先には「同時に戦後の漢民族による支配にも批判的なのであり」と書いていますが、「戦後の漢民族」というのは中国共産党ではなく、蒋介石率いる国民党を指すのではありませんか?台湾独立を掲げる民進党の前党首・李登輝氏は親日家で有名です。高金素梅氏が、日本にも戦後の漢民族による支配にも批判的と言われても、それは日本・民進党・国民党に対して批判的なのであって、中国共産党に批判的なのかは不明です。


 映画を観て、先ず思ったのは、首狩りの歌が新曲だったこと。その曲自体は語り継がれたものではなかった点で、故・小泉文夫氏の研究していた首狩族と音楽の関係とは異質ではないかと感じました。それから、高金素梅氏は癌を患ったことを二度ほど告白していますが、それと立法委員との活動に何の関係があるのか、この辺りに少数者の甘えを感じました。

 それから、台湾原住民族を支配してきた国家であるオランダ・スペイン・清朝・大日本帝国・中華民国の国旗を、原住民族を表す蛇が貫いている図を、高金素梅氏が紹介するシーンがあります。特に大日本帝国の支配が過酷であったとも言っていました。ここに中国共産党が入っていないのは、台湾原住民族を現に支配していないので当然ではありますが、清朝は満州族の王朝ですし、戦後の漢民族が国民党と中華民国を指すことは国旗から明らかであり、次のことと合わせて考えれば興味深いです。

 それは、原住民族部落工作隊の綱領に「日米の植民地主義に抵抗する」という一文が入っていたことです。何故、台湾原住民族の土地を支配していない米国が挙がっているのでしょうか。連合国軍が憎いのであれば、米英蘭なども批判すべきですが、そんなことはない。台湾大地震後に結成された団体の綱領に「日米の植民地主義への抵抗」と書かれても、具体的にどういう意味なのか。反戦的な意味合いから、米国のベトナム戦争やイラク戦争を非難するのであれば、中華人民共和国によるチベットやウイグルへの侵略、中越戦争もまた覇権主義という観点からは非難に値します。が、ここでも中国共産党の名は一切出てきません。

 この点に、本映画のメッセージが隠れていると思いませんか?日本・米国・台湾に共通するのは何でしょうか。中華人民共和国、中国共産党との緊張関係ではありませんか?この映画には何が描かれていて、何が描かれていないのかを考えれば、自ずとある国家が浮かび上がってくると思います。そう考えると「良識ある漢族」という言葉も味わい深いものがあります。


 「自分達の民族の自治区をつくる」という点について。タイヤル族の人口は8万6000人と言われています。高砂族全体では40万人と言われています。この内、高金素梅氏が代表するのは何人でしょうか。立法委員に立候補した際の経緯や高砂義勇隊慰霊碑の撤去活動に積極的な件と合わせて、この人物が高砂族を代表できる存在なのかどうか、中国と台湾が独立で揉めているのに台湾内で自治を求めることが本省人や他のタイヤル族にとっても妥当なことなのかも含めて、検討されたでしょうか。

 あとは、個人的な幾つかの感想を。映画を観るまでは特に映画自体には好悪の感情はありませんでした。が、特に二つのシーンが残念でした。一つ目は、靖国神社の関係者に詰め寄るシーン。少数者の権利を鈍感な多数者に伝える際には、時に怒号や暴力が生じることもありますし、それをもって少数者だけの責めにするのは不公平な部分もありますが、あのシーンでの怒号は少数者の態度というよりヤクザそのものでした。

 そして、そのシーンで高金素梅氏側の人間が「神道はクソだ」と連呼し出すと、何故か本映画の主催者側の人間が、数人、同意するように笑い出しました。その会場の入り口で「平和護憲」と「教育基本法改悪反対」のチラシも貰いましたが、これが平和を愛する方々の姿なのでしょうか。自身に大切にしているものがあるのなら、他人にも大切がするものがあることを認めるべきでしょう。裁判所前で「通行の邪魔だ」とおっさんに絡まれるシーンも、確かに通行の邪魔でした。自らの正しさを示したいという理由であれ、手順の正しさを踏まえなくては周囲は認めてくれません。ここにも甘えを感じました。


 二つ目は、米国の国連ビル前でのデモ行進のシーン。「KOIZUMI GO TO HELL」という叫びは、特に小泉首相に思い入れはないですが、不快でした。彼らの「靖国神社への高砂族合祀反対」の主張が、どこをどう間違えば「地獄へ行け」にまで発展するのか。「高砂義勇隊は皇民化教育で二度殺された」と主張していた高金素梅氏の主張らしからぬ行動だと感じました。あの集団が国連ビル前で抗議するための資金や訴訟費用は一体どこから出ているのかも気になりました。「良識ある漢族」が支えているのでしょうか。

 まとめ。何故か唐突に米国批判が出てくる。現代のもう一つの覇権主義国家である中華人民共和国、中国共産党の名が一切出てこない。中国共産党と時に緊張関係に立つ国家ばかりが批判されている。社会主義を賛美しているにもかかわらず、台湾の隣にある中華人民共和国における社会主義の現実については語られない。以上、僕の感想です。


【追記】
 kusukusuさんのblogはTBが出来ないようなので、追記形式でリンクを貼っておきます。jingさんのblogはTB条件が文中リンクのようなので、こちらも追記形式ですがリンクを貼っておきます。

2006/06/29
地球が回ればフィルムも回る:『出草之歌』
2006/07/04
地球が回ればフィルムも回る:『出草之歌』に関連して丁寧な反論を頂きました!

2006/06/24
自知之明:24日より《出草之歌〜ある台湾原住民の吶喊 背山一戦》
2006/07/08
自知之明:《出草之歌〜ある台湾原住民の吶喊 背山一戦》 
posted by ねこめ〜わく at 00:31| Comment(23) | TrackBack(3) | 事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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