2011年02月05日

相棒「聖戦」の感想

ネタバレ含みます。

あらすじ

高台にある公園。ブランコに揺られる中年女性。双眼鏡でふもとを眺めている。
視線の先には窓の開かれた家。ベットに座った男が携帯で妻と話をしている。
「後で合流するから」
男の声は高台の女に盗聴されていた。男がベットをめくり何かを取り上げる。

「プレゼント」
高台の女が何かのスイッチを押す。
と、瞬間に男のいる部屋が爆発。炎に包まれた。


捜査が始まる。Aの妻への事情聴取。Aは怨みをかっていなかったか?
A妻「怨みはかっていたでしょう。人を殺した事があるんだから。。」

被害者Aには前科があった。麻薬吸引時の交通事故。単車で人をはね、死亡させていた。しかし、その後、Aは更正したとA妻は言う。「借金から風俗に身をやつした私を救ってくれたのだ」と。

交通事故で死亡したのは高台女(以下女)の息子だった。当然、女は捜査線に当然上がってくる。が、交通事故が十数年前に起こっている事、爆発製造に関する蓄積、証拠が無い事から捜査は行き詰まる。

逆に爆弾に使用された薬品が別の男Bの元で発見される。彼は爆死したAと麻薬絡みで過去に繋がりがあり、怨恨の線も推測できた。

杉下、神戸両刑事は現場に残されていた起爆装置の残骸から、起爆はA宅を見渡せる場所で行われたと推理し、高台を発見する。高台にはブランコ。向かいのベンチ。ベンチにはビスケット落ちていた。

女宅に事情聴取を求める杉下と神戸。女は機嫌良く二人を招き入れる。紅茶に茶菓子を出しもてなす女。茶菓子は高台に落ちていたのと同じビスケット。
『捕まえるつもりなら証拠を持ってこい』
後に女から二人に投げ掛けられる言葉だが、ビスケットはそれと同じ。 警察に対する挑戦だった。 犯人は彼女だとの確信を深める二人だが、片っ端から模様替えされた女の部屋から証拠品が出る事は無い。

容疑者として身柄を拘束されたB。取り調べを受けている。否認し続けるのだが、捜査官が訪ねた際に逃亡を謀った事が災いし、証言を受け入れて貰えない。Bには絶縁された母が居た。その母の余命いくばくも無い事を刑事がくる前にB姉から聞いていた。母のいまわに寄り添いたいという想いがBを逃走に駆り立てたのだった。

Bの取り調べ室をマジックミラーから見つめていた杉下、神戸はBの母の病室に向かう。

鼻から呼吸用のチューブを差し込まれ、既に息絶え絶えな老婆。渾身の力で上体を起こし、
「申し訳ありません。申し訳ありません。」と何度も頭を下げる。

まだ確証は無いが、それでも老婆に「Bが犯人じゃない。」と伝えべきと考える神戸。
捜査に専念する事で老婆の心の痛みに報いようとする杉下。
杉下と神戸の間に確執が生まれる。

神戸は杉下との捜査を辞め、独自で捜査を開始。グレーな手法を用いてでも、事件を解決に導こうとする。

Aの妻に女が交通事故被害者の母だと教える。
当然、A妻は女と話がしたい、いう。
なし崩し的に録音機を持たせ、オトリ捜査をさせる事に。

B妻は女は働くファミレスに向かう。
「何故、夫を殺したの?夫は(刑期を終え)罪を償ったのよ。」
掴みかかるB妻。はねのける女。拍子に地面に落ちる録音機。

女は録音機に気付き、
「何か落ちましたよ。」
拾い上げながら電源を落とす。
そして録音機を引き渡す瞬間にA妻の耳元でささやく。
「最高の気分よ。アンタの夫を木っ端みじんに出来て」

怒り心頭のB妻は女の首を締め上げる。
女「お客様、止めてください。」
店長と神戸が止めに入る。

-中略-

その後はA妻がナイフを持ってファミレスに襲いに行くのを相棒二人(杉下神戸)止めたり、爆破実験に使用された砕石場。女に脅迫されていた協力者が明らかになったりでクライマックス。

女が息子との思い出の場所で自殺を謀ろうとする。二人の制止も虚しくボタンに手をかけたその時、A妻乱入。起爆装置を持った女と自分を手錠ど繋ぐ。

A妻「ここはAが(私に)罪の告白をした場所。ここを大好きだった人を自分は殺したんだって。そんな自分(A)でも(A妻は)受け入れてくれるかって(プロポーズ?)。」

女「くだらない!何なのよ。その言い訳は?四人で一緒に死にましょうよ!」

杉下「四人ではありません!A妻さんの体には新しい命が宿っています。」

A妻が女の手を自分の腹部に当てる。「分かるでしょ?」

杉下「息子さんに言えるんですか?無垢な命も道連れにしたと。」

起爆装置を手放し、崩れ落ちる女。

A妻「これが私の復讐よ。」



と、こんな話でした。
反響としては、良かった〜、って声が多かったです。でも、僕にはかなり壊れたプロットに思えました。

普通、刑事が容疑者と被害者家族を接触させるか? 物語でもナイフを持ってA妻が容疑者を襲おうとするシーンがあったけど、たまたま相棒の二人が現場に居ただけで、居なけりゃ新たな事件の創出ですよ。事件となれば降格ぐらいじゃ済まない。懲戒免職ものです。最後、説得もA妻の突入を許した段階で完全にアウト。 爆破で一般人を巻き込んだら、彼らが爆死するだけで無く、上役の首まで飛ぶでしょう。

説得方法の「無垢な命まで殺せますか?」もプロットとして、どうなんだろう?
テーマの読み込みが甘過ぎる、と思います。

聖戦と掛けて
自爆ととく。
その心は?

【手段を選ばない】が何故出てこない。

脚本の古沢良太と監督の和泉聖治はどんだけヌルいんだ? 登場人物が生きてない。というか、登場人物が台本の都合で動き過ぎです。

他人の子供が出て来たくらいで、脅迫して共犯者作り上げたり、犯人でっちあげたりする犯人女の心が折れますかね?

神戸にしたって役割を薄っぺらくしすぎで、及川ちゃんが可哀相。命わずかな老婆の願いを叶えたい、その気持ちは分かるけれど、まだ容疑者の段階の人間を被害者家族を引き合わせ、オトリ捜査に利用する、とか捜査が間違ってたらどうすんだ?てか、そんな不安要素を捜査に持ち込んで良い訳が無い。老婆に心を持っていかれすぎて、他の人間に対して配慮が欠如している。これじゃ【神戸=阿呆】だし、左遷されて当然な人材だよ。

相棒は好きだけど、このシリーズの問題点って加害者の人間性にフォーカスしすぎている部分だと思う。

酷い言い方すると、だいたい殺人とかそういった度を越えた選択肢を選ぶ奴って、人生詰んでるんだよ。人生が明るければ、未来を感じられたら、そんな選択肢選ばないもの。

殺される側には色んな奴がいるけど、妬ましさが犯罪に繋がるケースもあるし、どっちかといえば、(大小関係無く)社会に貢献している人間が殺されるケースの方が多い。

極端な例だけど殺された人々を書くね。
ジョン・レノン。ケネディ。ガンジー。キング牧師。

じゃ、彼らを殺した人間は?彼らは社会に何か寄与した?

加害者にも彼らなりの生き様、犯罪に至った経緯がある。けれど、それは被害者にもあるものだ。

作中、プロットは女に向けた台詞として
A妻に「彼(A)は(刑期を終え)罪を償ったのよ!」と喋らせている。
「Aは救われたんじゃない。Aが私(A妻)を救ったのよ」とも。

A妻が、第三者や世の中に対して、Aは罪を償ったと口にする。 これなら判る。けれど、被害者側に対して、加害者側が罪を償ったと強弁出来るものなのか?仮にしたとして説得力なんて無いだろ?
作中の流れだと民事裁判は行なって無さそうだし、遺族に対して賠償をしているようでも無い。Aが償った罪の多くは社会に対してであり、遺族に対してでは無い。また、仮に賠償をしたとしても、「罪を償った」と強弁出来るものだろうか?法律的には通っても、道徳的にどうなんでしょ。


失われた命は還らない。A妻が女を許さないのと同じように、女もAを許さない。別の命の話を持ち出して説得出来るとでも?当事者からしたら、全くもって無関係なんだよ、そんな話。これくらいのすり替えで納得する人って、幸せ回路というか、感受性過多なんじゃないかな。


最近だと、ベストセラー「告白」も漫画で読んだけど、こっちは逆に振り切れ、これもまた、気持ち悪かった。被害者家族が必殺仕事人になってるじゃない。。この暴力は許すのか?と。

結局、現在、日本で受け入れられるミステリーってどっちも同じなのかもしれない。加害者側に付くか、被害者側に付くか、それだけの違いしか無い。

実際の事件は解決しても、壊れた関係が残る。やり切れなさだったり、救われなさだったり。時と関係者の努力でゆっくりと癒していくもの。だけど、今流行っているのの多くは、関係者の苦悩を快刀乱麻。実際は切り捨ているだけなのを隠し、判りやすいカタルシスを目指す。

娯楽だから、何でもいいんだろうけど、それだったらシリアスに演出しなくてもいいんじゃないか?と思ったりする。所詮、ザルなんだしさ。
posted by ねこめ〜わく at 19:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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